2011年08月28日

海賊版の秘密

中国の評判を落としているネタの
一つに海賊版、あるいは「パクリ」ものが
ある。

グローバル時代に国際的なルールを
守らないのは確かに問題だろう。
ただ、非難するだけでは何の意味のない。
なぜ、海賊版やパクリが横行するのか。
その社会背景を考える必要がある。

まず考えなければならないのが、
中国の規模だ。いくら共産党の統治が
浸透していても、あれだけの面積と
人口の国だ。自由な経済活動を
完全に監視することは不可能だろう。

もうひとつは、表現の自由と関わる。
民国期、政府によって「発禁処分」となった
本を海賊版として「不法」に出版することで、原作に
忠実な内容の本を流通させることができたのだ。
この場合は、文化の普及と発展に海賊版は
貢献していたとも言えるのである。

さらには、大企業が不当に高い値段で
本を発行するのに対抗して、安価な本を
出すというのもあった。
読者の側も、高い本よりも安い本を
選ぶのは当然かもしれない。

「政策」があれば、「対策」がある、という
のが、中国社会の在り方だ。
これを取り締まるのは膨大な経費が
かかるに違いない。

でも、そもそも知的所有権の歴史は、
イギリスの「囲い込み」運動にまで、
遡る。その後、資本主義の発展とともに、
企業の独占的利益の追求を認める上で
特許などのシステムが制度化された。

しかし、知的所有権は現在、ラテン音楽から、
植物の種、ヒトの遺伝子情報にまで、その
対象を拡大している。

さすがにこれはやり過ぎだろう。
生命の領域にまで所有権は魔の手を
伸ばしつつあるのだ。

この間の事情は、バンダナ・シヴァさんの
本をご覧ください。




にわかに中国を批判できない所以は
ここにもある。




Posted by ドクトルふぁん at 01:39│Comments(0)中国史
 
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